WHAT'S NEW かごしまは、鹿児島のあらゆる新鮮な情報を集めてご紹介しています。

焼酎が苦い夜

2008年05月14日
NikiNiki会員 OBA-KEさんの日記から


先日のこと・・・

遅い夕食をとっていると、ケータイにいつも行く居酒屋の女将から着信があった。


「Aさんが亡くなられたの。今日お通夜なんだけど、行く?」


あまりにも突然の訃報に驚きながらも、
身なりだけを整えて、女将の待つ天文館の店へとタクシーを走らせた。


Aさんと出会ったのはもう4年ほど前になるのか。

もともと会社員時代に通っていたその居酒屋に、
福岡から帰って7〜8年ぶりに顔を出した時に、
カウンターを挟んでマスターと冗談を言い合いながら飲んでいたおじさんがAさんだった。


私が出会う少し前に大病を患い、手術をしたと言うが、
その割りにはいつも焼酎のキープ瓶が横にあった。


店で2度ほど顔を合わせると、3度目に会った時は

「こっちに来なさい」

と隣りに呼ばれ、
自分のキープ瓶の焼酎を私のグラスになみなみと注いでは

「どんどん飲みなさい」と笑っていた。



酔うとあまり呂律が回らなかったが、
それでも自慢の1人娘の写真をそっと見せては

「うちの娘なんだよ。仕事ばっかりしてさ」

と、父親らしい愚痴をこぼしていた。



昨年は再び体調を崩し、店で会うことも少なくなった。

それでもたまに会うと

「お、ライター、仕事がんばってる?」とか

「どっかいい男はいないの?」とか、かならず話しかけてくれた。



4月の初め頃、店の入口で私とAさんが入れ違いになった。

その時は「お、ライター!読んだよ、あれ。がんばれよ!」と、
私が久しぶりに著名入りで書いた記事のことを褒めてくれた。


ただ、その時のAさんはかなり痩せていて、
天文館の灯りに消えていくその背中が、やけに頼りなげに見えた。


それが、Aさんとお会いした最後だった。


女将と2人で駆けつけた通夜の席で、
奥様と自慢の娘さんに初めてお会いした。

棺の中のAさんはとても安らかな顔つきで、
今にも「冗談だよ」と笑いながら起き上がりそうなほどだった。


店に戻ると、Aさんの指定席にはキープ瓶の焼酎にコップ、
お皿、お箸、おしぼり、そしてお花が置かれていた。


マスターはその向かいで、
他のお客さんがいる手前にこやかにはしていたけれど、少し、肩が落ちていた。



Aさんのご冥福をお祈りしながら

1杯だけ、Aさんのコップと乾杯をして、焼酎を飲んだ。

今夜の焼酎は、苦かった。





タグ :焼酎

Posted by kts-conweb at 15:42│Comments(0)OBA-KEさんの日記
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
 

▲ページの先頭へ戻る