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おせんにキャラメル

2010年01月29日
NikiNiki会員 めいさんの日記から




私が子どもの頃の博多の映画館は、
今のシネコンとは全然違う風景でした。


2本立て、3本立てなんてざらで
入れ替わり制なんてありません。

映画の途中で後ろの入り口が開くと、
後ろからサーッと、白く明かりが入ります。


途中から入る時に
重たいドアを静かに開けば、
外とは別世界の、映画のセリフが急に大きく飛び出してきて
早く席をみつけなきゃと、ワクワクそわそわしたものでした。


タバコを吸うのも自由で、
映写機からスクリーンまでの、横に伸びる四角錐の光に
クルクル渦を巻いたタバコの煙と、キラキラ舞う埃が生き物のように
妙に美しく見えました。

映画館の中でも名画座は、
古い映画を再上映する映画館で
かつて見そびれた映画を安く見ることができました。


私達は、ビートルズ映画
「ヤァ!ヤァ!ヤァ!ビートルズがやってくる!」
「HELP!」
「LET IT BE」
の3本立ての時は、必ずギターを持ち込んで、
スクリーンのビートルズと一緒に歌いました。


一年のうちに、2週間クールで3~4回、
ビートルズの3本立てを上映する名画座があって
ギターを持ち込んで歌う常連グループのひとつでした。


寅さんシリーズや、
コント55号、ドリフターズのどたばた映画では
おじさん達がスクリーンに野次を飛ばしたり、

タイガーズやピンキー&キラーズ等の
アイドル映画では、
観客がキャーキャー叫んだりして
とても賑やかな映画館の風景でした。


オールナイトは、
ジャッキー・チェンの蛇拳、酔拳、笑拳の3本や
若大将シリーズ3本が一晩に上映されたり、
駅前シリーズや社長シリーズなど往年のモノクロ映画も
あったように覚えています。


当時は指定席などなく、
人気の映画では立ち見や
通路に座る人もたくさんいました。


泣いたり笑ったり、
隣の席の人のひきこもごもの息遣いを感じました。

それでももめるようなことはなく、
なんとなく映画館に一体感があり
不快に思う人も少なかったと思います。


映画館は、エンターテイメント施設などではなく
ただ娯楽に興じる非日常の場所でした。


映画と映画の間の休憩時間には、
お菓子を並べた木の箱を
肩から斜めに紐で提げた売り子さんが

「おせんにキャラメル…」
なんて言いながら
客席の階段でおやつを売りに来ます。


一番高かったのは「アイスビスケット」。
アイスクリームをビスケットでサンドしているものです。

映画を見終わって感動したら
パンフレットを買って帰ります。


A4サイズの映画のパンフレットはカラーで
ビデオがない時代に映画を思い出すための
ちょっと贅沢なお土産です。


「小さな恋のメロディ」
「ロミオとジュリエット」
大切にしていたあのパンフレットはどこにいったかしら。



昭和の庶民の娯楽場だった映画館は、

いつからか、

シネコンに変わりました。



完全入れ替え制、全指定席で
席もゆったり、隣のひじが当たることもありません。


映画館の入り口のカウンターでは、
整然とポップコーンや紙コップ入りの炭酸飲料が売られ、
持込なんて禁止です。


“もぎり”なんて言葉も、
もうなくなっちゃったのかしら。


映画館でしてはいけないことが多くなり、
映画を観るというより
観みせられているような気がします。



昭和のあの、自由な映画館がまたできたら、
2本立て、3本立ての古い映画を
好きな時間に映画館に入って観ることができたら、

なかなか出かけたがらない
この先のおばあちゃん達も映画を観たいと思うかな。


おじいちゃんと
思い出デートに出かけるかな。

「おい、煎餅、こっちこっち!」

そんな精一杯のエスコートを
おじいちゃんがするのかな。


原節子の結婚式のシーンで
昔を思い出したおじいちゃんとおばあちゃん、
二人手を握って泣くのかな。



天文館シネマが着工を延期したそうです。

ニュース映像のWhatのシャッターが、
もったいない気がします。

Posted by kts-conweb at 14:14│Comments(0)めいさんの日記
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